Ⅳ 探究の入口
「生涯読書」という長いスパンで読書ジャンルを振り返ってみましょう
●幼児期や児童期から「読み物を楽しむこと」(娯楽読書)がスタートします。
聞くという楽しみを知りながら、文字を辿りながら読むことを覚えていきます。
●つぎの中学、高校、大学1年生の時期は、「必要な知識や情報を選択的に複数冊、読み、思考する」(情報読書)時期が加わります。
そこで、「あらまし読み」が便利です。
●「情報読書」は、「読むために読む」のではなく、「思考や行動のために読む」ことが重要です。高校や大学では、「レポート」や「プレゼンテーション」というアウトプット行動がそれにあたります
あなたは、読み聞かせをしてもらったときに読んでもらった本から始まり、小学校、中学校、高校、大学入学後…と、どんな本を読んできましたか?
誰とその本について話しましたか?このような振り返りをしてみると、気づけることは多いものです。
私が出会ってきた、教育学部の学生さんたちの傾向はつぎのタイプが多いです。
小学校までは、物語を中心によく読んでいました。家族、先生、友だちとも本の話をしていました。ところが、中学校、高校と進み、部活動やスマホとの時間が増えるにつれて、一気に読む時間が減ってきます。友だちと本のことを話題に上げることも減り、むしろ、本の話をすると、友人との関係がまずくなってしまうケースも報告されていました。大学4年になっても、「新書」などのジャンルの読書が極端に少なく、その本について話す人もほとんどいません。
ここから、日本の児童、生徒、学生の読書は、「ひとりぼっち」で読んでいることが多く、そのまま、読んでも、読まなくてもわからない、一人でこっそり楽しむ世界という、陰に潜んだ活動となってきました。
新潟大学の藤村正司先生は、この大学生の状態を取り出して「孤読化」と名づけています。
また、この状況は、教育学部の学生さんの結果として、とても心配なことです。将来、学生は先生になり、児童、生徒たちに、どのようにして「読書教育」をしていくのでしょうか。
New Normal時代の新しい読書教育こそ、「読む間は一人で集中するにしても、読みながら、言葉を書き、マップに描き、話し聴く活動」を盛り込んだ読書教育が必要だと感じています。
直接対面しながら、読みに集中し、書き描き、ワイワイと賑やかに対話すること。
「あらましメソッドONLINE」は、Zoomを使って、読みに集中し、書き描き、ブレイクアウトの時間に、知らない人と対話するワクワク感に出会うこと。
こうした新しいタイプの読書ワークショップをきっかけに、「読書」の一部分を協働活動として可視化します。しかも、直接対面でもONLINEでも、開催できます。
あなたもどこかで参加してみませんか。
先生方も、学生に学校単位で仕掛けてみませんか。
実は、読書のジャンルを決める名前が、日本では正式に決まっていません。
一例として、塚田泰彦(2014)『「読む」技術』で提案している「娯楽読書」「情報読書」「教養読書」の3つのタイプで、「生涯読書」を考えてみましょう。
雑誌や小冊子などを趣味として気軽に楽しむ「娯楽読書」 |
文献や資料を目的に応じて取捨選択する「情報読書」 |
哲学書を読んで人生について考える「教養読書」 |
幼児期の読み聞かせなどを通し、小学生以上は「娯楽読書」を続けていく人が多いでしょう。小学生高学年あたりから、中学生、高校生、大学生は、「情報読書」を経て、専門の学びを始めていく時期にあたります。大学院生、社会人となっても、「情報読書」は欠かせません。そして、「教養読書」に進んでいきます。
学校教育では、「たくさん本を読みましょう」「課題図書を読んで、読書感想文を書きましょう」などの読書支援には長い歴史があります。しかし、本格的に「読むタイプ」に合わせた読書教育がされていないのが、日本の実情です。
塚田泰彦(2014)『読む技術―成熟した読書人を目指してー』をもとに作成
「読書歴」を踏まえて、
いま、どんなジャンルの本を読んでいくといいのか、
これから、読んでいきたいのか、
という俯瞰的な視点で、「自分の読書生活」をイメージしてください。
ただし、今までと同じ「通読」では、やはり、数ページでダウンするという
厚い壁にぶつかることになります。
慣れない読書ジャンルである「情報読書」に入るためには、
それなりの準備が必要です。
このHPでは、積読の挫折に陥らないように、サクサクと本の話題に乗っていく読書術を「あらまし読み」として提案しています。一度身につけると、自分の読書の技として、多様に変化もさせられ、「読書」そのものの意味が大きく変わります。
「あらまし読みを教えてくれてありがとうございました!!」という受講生の声を、多く受け取り、この「あらまし読み」を日本中に伝えたいと思っています。
「1か月に2冊」というペースで、「通読」や「精読」は難しいものです。
しかし、「あらまし読み」なら可能となり、自分のなかで、2度読み、3度読みするべき本が、自ずとわかってきて、俯瞰的な視点が増えていきます。
そして、「なにより楽しいです!!」(学生の声)
つぎの節は、
暗黙知になっていた「一般的な情報読書のための技術」を知り、「あらまし読み」を活用する話です。
説明は、もう結構という人は、