Ⅰ 「あらまし読み」実践

2. シート活用―時間

注)熊倉峰広(2003)『「味見読書」で本離れが無くなる!』明治図書から、始まった「味見読書」である。

 

国立教育政策研究所の有元秀文による推進から、現在、中学校、小学校へと実践が広がっている。

●「あらまし読みシート」は、60分程度で1冊を俯瞰して眺めよう

 

●対面で行う場合は、
「読む・書く(描く)」という「静の時間」と「話す・聴く」の「動の時間」を
繰り返そう

 

●ONLINEで行う場合は、
前半、「読む・書く(描く)」という「静の時間
後半、「話す・聴く」の「動の時間」
2つに分けて、やってみよう

 

 

「あらまし読みシート」の時間配分に関する考え方

生徒さん、学生さんへ

1授業時間を設計するために、先生たちは生徒さんや学生さんの立場に寄り添って、

どうしたらいいだろうかと、頭をひねっています。

皆さんも、主体的に、

「あらまし読み」をするときの60分程度の集中力、1冊を読み切る鋭い視線

練習していきましょう。

とても読めそうにない場合には、

易しく読みやすい本に替える勇気をもってください。

「できない」という経験を通して、自分の読む力を知っていきましょう

先生方へ

先生方は、授業という枠のなかでお考えになるので、時間配分は一番ご苦労されるところと思います。何授業時間をかけて、「選書する」、「あらまし読みする」、「ミニレポートを書く」などの学習活動を生徒や学生に実施されるかは、ご自由です。

 ただし、ひとつだけ譲れないところがあります。

 

それは、1冊を1授業時間で「あらまし読みすること」(読む・書く・描く・話す・聴く)です。

 

どうしても、1冊の本が仕上がらない場合は、

事前に、あらまし読みのやり方を先生が説明しておく授業時間を設ける、

生徒や学生の予習として「STEP1」までを済ませておくなどの工夫をしましょう。

1冊の序章や興味ある章は、一気に読み、だれかとその本について話をする活動を

 1授業時間内におさめてください。

こうすることで、1冊を60分以内に読み切った感じが生徒さんや学生さんに残ります。

実際、大学1年生があらまし読みを始めてみると、

「40分で1冊できたよ」という声もよく聞きます。適当に省略したり、用語調べなどを後に回したりと、学生さん達も要領よくやっています。

大事なところに集中することを覚えさせてください。

 

そして、生徒や学生に習慣化させるところまで継続することがつぎの目標です。

目標は、 「あらまし読み」時間を自分で計画できることです!

「あらまし読みシート」は、作成当初、大学の授業時間(90分間)を意識して作成しました。今回のHPに掲げた「あらまし読みシート」は、成人でも丁寧にやっていくと、90分以上かかります。

しかし、教室や図書館のラーニングコモンズで一斉に行う「あらまし読み」は、本の要を掬い出すことに意義があり、今ある1授業時間内に行うことにしています。むしろ、書き込む時間を厳守して集中の練習にしていきます。結果、読めたページ数が少なくても、書けた文字やマップの語数が少なくても、1授業時間(高校50分か、大学90分)に60%読んで、60%書ければよいのではないかと考えています。

一定枠の時間で、読み書き描きに集中することに重点を置いています

 

生徒さん、学生さんのなかで、常日頃から隙間時間にも惜しんで読書する習慣を持っている人は少ないのではないでしょうか。多忙な生活のなかでも、集中して情報や知識を獲得する習慣をつけるためにも、「集中力重視の読みの時間」と理解してください。 また、集中力は、成人でも15分ぐらいですから、無理をしてだらだら読まなくても結構です。50分でここまで読めたら儲けものというぐらいの気楽な考えでいきましょう。

そのためにも、平易な本から読み始め、記録に残して無駄を失くすことが大切です。

自分のペースができてきたら、あらまし読みにどのくらい時間をかけるか、自分で決めてください。新しい自分らしい「読書教育」のはじまりだと柔軟にとらえてみませんか。

 

高校のように、50分の授業時間の制限のなかで行う場合には、先生方には工夫が必要になります。すでに、実践した高校の場合では、1時間目は、「あらまし読みシート」の説明だけを行い、2時間目、3時間目は、先生はひたすらストップウォッチとにらめっこ。生徒さんは、50分間で1冊のあらまし読みが終わり、2冊仕上がったそうです。

また、【STEP1】は、慣れてくれば一人で予習して、授業では、【STEP1】の対話から始めることもできます。時には、他者との対話のない、一人であらまし読みすることもあってよいと思います。もちろん、他者と読む方が圧倒的に面白いのですが。

 

「あらまし読みシート」には、目安の読み書きの時間や独り言の時間、対話の回数に応じた時間を目安として入れておきました。しかし、実際に、「あらまし読み」に慣れてきた学生さんたちに集中してもらうと、30分~40分ぐらいで読み・書きができます。さすがに、話し聴く時間までは作れませんので、授業中はもっぱら対話の連続という実践展開も、慣れてくると可能です。

隙間時間に、呼吸するように、あらまし読みができますように!

 

「あらまし読みシート」を使って、本を読み書きすることは、本来、ひとりの自習でできることです。読書の時間の見える化を図って、「あらまし読みシート」を作りましたので、シートを丁寧に書くことには意味はありません。先生方もこの「あらまし読み」シートを提出させてきちんと書けているかで評価することは避けてください。本と出会ったことに意義を置きます。「あらまし読みシート」に慣れてきて、50冊以上の本を読むようになると、このシートの完成よりも、重要なところを付箋しながら、情報カードや本のカバーの裏(白紙)に、マップを描いて終わりという場合も出てくるかと思います。

「あらまし読みシート」を使うのは、情報読書を効率的に行うための入口です

 

下記に「あらまし読みシート」に書き込んだ時間を一覧表にしました。

【STEP3】3回の対話は同一時間内に繰り返す体験は、大きな意味があります

ぜひ、時間の許す限り、同時に3回対話をチャレンジしてみてください。

 

学生さんも、「同じことを3回話していくうちに、自分の理解がより明確になり、言いたいことが分かってきて、腹に落ちました!」と振り返っています。

 

STEP

読み書き

独り言

対話

2回の追加対話

時間 計

1

10

1

5

 

16

2

7

1

4

 

12

3

20

1

7

14

2842

  計

37

3

16

14

5670

 

注)単位は分。

「あらまし読みシート」を使うのは、情報読書を効率的に行うための入口です。

 

隙間時間に、呼吸するように、「あらまし読み」ができますように!

 

「不読者」になるよりも、その本から掬い出す読み方で、視野を広げましょう

➡つぎは、

Ⅰ「あらまし読み」実践 3「あらまし読みシート」STEP1

の「1」~「11」の課題にそった解説です。